ライバル会社の知財、気になりませんか?

 朝夕はめっきり涼しくなりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。先回に引き続きとなってしまいますが、今回も少し活動報告をさせて頂きたいと思います。以前少し触れさせて頂きましたが、今年度は日本弁理士会東海支部の知的財産支援委員会に所属しており、知的財産制度の支援及び普及の一環として、様々なイベント等を開催しております。今回は、この知的財産支援委員会の活動について、紹介させて頂きます。

メッセ名古屋2017への出展

 来月、11月8日~11日にポートメッセ名古屋で「メッセ名古屋2017」が開催されます。日本最大の異業種交流会とも言われるイベントですので、出展される方もいらっしゃるかとは思いますが、日本弁理士会東海支部も出展させて頂きます。当日のブースでは、担当弁理士(私は8日担当です。)が日替わりで無料相談に対応したり、ミニセミナーを担当弁理士が開催させて頂いたりします。現在、委員会内で最終調整を行っているところではありますが、セミナーに関しては、あまり難しくなりすぎない方向で話し合っておりますので、もしよろしければ、会場に足を運んで頂けるとありがたいです。余談ではありますが、11月8日は弁理士会東海支部の一員としてブースでの無料相談員を中心に、11月9日は、小牧商工会議所の一員として会場内見学を中心に、それぞれ参加させていただく予定です。見かけた際には是非お声がけ下さい。

第3回知財サロンのご報告

 さて、日本弁理士会東海支部では、知財支援活動の一環として、「知財サロン」を毎月開催しております。この知財サロンでは、数人の弁理士と企業の方(主に、経営者や知的財産担当者、技術者)とが、テーマに沿って意見交換を行うというもので、「無料相談会」に行くほどではないけれど、周りの意見にも興味があるという話題について、情報交換することが目的です。もちろん、弁理士会側としては、潜在的なニーズを発掘することで業務改善に繋げたいというところが本音かとは思いますが。なお、来月以降も日本弁理士会東海支部(名古屋商工会議所ビル内)で毎月1回開催する予定ですので、興味のある方はご参加下さい。

 今回、第3回目のテーマが「ライバル会社の知財 気になりませんか?」というものであり、私はグループのファシリテータを務めさせていただきましたので、そのときの様子を報告させて頂きます。テーマがテーマであり、参加者の属性が直前まで明らかにされない等、ファシリテータとしてはなかなか厳しい状況ではありましたが、全体的には活発な議論が行われ、ご満足頂けたかと考えます。

 参加者は、知財又は今回のテーマについて関心のある方々で、物流業界の方が半分と金属加工関係者の方が半分、それに愛知県の職員の方という属性であり、立場としては、経営者側、技術者(兼知財担当)が半々です。ここに我々弁理士が加わりますので、意見交換の場としては、様々な立場の方の意見が出る良いメンバーが集まったかと考えます。

 今回は「ライバル会社の知財 気になりませんか?」というテーマではありましたが、参加者の皆さんの興味関心は、「ライバル会社の知財」よりも「自社の知財」に向いているようでしたので、あまりテーマに拘りすぎることなく進行させて頂きました。知財サロンは、テーマを定めてはおりますが、進行はファシリテータに一任されておりますので、参加者の興味関心に沿って、毎回議論の方向性は大きく変わります。今回、上記テーマから外れた進行をしたのは、ライバルの知財が気になるかどうかは、業界や業界における企業の位置づけ(いわゆる、リーダーかフォロワーか)、商品開発の方向性といった企業の置かれている状況に大きく影響され、特に中小企業の場合、ニッチャーに位置することが多いため、他社の知財よりも、自社の技術をどのように守っていくかについての関心が強い印象を受けたためです。それであれば、「他社の知財」よりも「自社の(知財面からの)立ち位置」について考えて頂いた方が、テーマにも関連するかと考えました。

 出てきた話題のキーワードとしては、知財ポートフォリオ(パテントマップや社内知財体制の構築、特許権取得戦略)、権利の有効性といったものが挙がっており、弁理士会の認識と企業の認識との間に若干の意識差を感じました。例えば、パテントマップの作成にしても、我々弁理士は知財に関して一定の知識や技量を有しているため、市販ソフトよりも解析手法の方に関心が向いております。一方、企業側からの意見としては、詳細であっても時間も費用も比較的高めの弁理士に依頼するより、専門知識が無くとも一定の結果が得られる市販ソフトで複数の結果を比較する方が、使い勝手が良いという意見が出ました。弁理士会の方針として「システムではできない専門知識」がウリではありますが、確かに、一つ一つのパテントマップは簡易的なものであっても、複数のパテントマップを手軽に用いることができることは、メリットが大きいと考えます。

 また、弁理士の立場としては、労力が増えるという観点は否定できませんが、「リスク」及び「資産」という観点から、もう少し知財を活用して貰えると、労力分に見合った利益が得られるのではないかという印象を受けましたので、その辺りをもう少し提案できると、上手く弁理士を使って貰えるのかと考えております。まず、「リスク」という観点から考えると、知財に対する関心が大きくなりつつありますので、他者の特許権や商標権等の調査を行わずに進めてしまうと、意図せず他人の権利を侵害してしまう可能性があります。特に、特許権や商標権の場合、意図せずに他人の権利に抵触してしまった場合には、回避が困難なケースが多く、対応が難しいケースが多いです。このことから、予め関連する知財の有無を調査することをお勧めします。なお、ここで調査というのは、完璧な調査を意味するものではなく、まずは「ある程度」のものから始めると良いかと考えます。完璧な調査を行うには労力も技術も必要ですが、ある程度の調査であれば、比較的労力も少なく、また、リスクに対する「労力対効果」が高いと考えます。

 次に、「資産」という観点から考えると、特に特許公報には、様々な技術情報が記載されており、製品開発のヒントになったという声もしばしば耳にします。また、同業他社の商標登録状況から、商品展開のヒントに繋がったという声も聞きます。この点を考えても、ある程度同業他社の知的財産については、情報を仕入れておくことをお勧めしております。

 弁理士業務と言うと、出願業務と考えられている方が多いかと思いますし、出願業務を中心とする弁理士も多いことは間違いありません。しかしながら、弁理士業務は出願業務に限定されるものではなく、今回話題にあがったような知財リスクに関する相談や、知財ポートフォリオに関連する分野等、知的財産権に関する法律業務を中心に知的財産を扱ったご相談についても対応しておりますので、気になることがあれば、お気軽にお声がけ頂ければと思っております。

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