新しいタイプの商標が更に登録へ
新しいタイプの商標が更に登録へ
日々、寒さが厳しくなっておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。先週は、先回ご紹介させて頂いた「メッセ名古屋」に参加させて頂きましたが、寒さを忘れてしまうほど多くの来場者・出店者によって、会場内は熱気に満ちておりました。メッセ名古屋では、日本弁理士会の一員としての出店でしたが、今週末(16日及び17日 10:00~16:30)は、春日井市総合体育館で開催される春日井ビジネスフォーラムに出展いたします。弊所ブースでは、無料相談会も実施いたしますので、近くを通りかかった際には、是非お立ち寄り下さい。
メッセ名古屋2017の報告
さて、先日ご紹介頂いたメッセ名古屋について、少し報告させて頂きます。メッセ名古屋では、日本弁理士会の一員として参加させて頂き、日本知財仲裁センターと共同企画のセミナー2回を含むブースでの展示を行わせて頂きました。ミニセミナーでは、用意した座席が満席となるほど多数の方に参加頂き、ありがとうございます。昨年度以上の来場者とのことで、弁理士会一同、大変感謝しております。
新しいタイプの商標
さて、平成27年4月より、音、色彩、位置、動き、ホログラム等を含む新しいタイプの商標が登録対象に拡充されたことは、記憶に新しいかと思います。商標は、同一の商標が出願された場合、最も早く出願した者が登録を受けられる仕組み(先願主義)であるため、登録対象が拡充されると共に、多数の新しいタイプの商標が出願されました。この時出願された商標の中でも「音楽的要素のみの商標」が先日登録されましたので、ご紹介させて頂きます
音楽的要素のみの商標とは
音楽的要素のみの商標とは、音の商標のうち、メロディー、ハーモニー、リズム又はテンポ、音色等のみからなる商標のことで、具体的には、正露丸の軍隊ラッパ音(大幸薬品株式会社,商標登録第5985746号)、インテルのサウンドロゴ(インテル・コーポレーション,商標登録第5985747号)及びBMWのサウンドロゴ(Bayerische Motoren Werke Aktiengesellschaft,国際登録第1177675号)の三種類が今回登録されました。これらの商標については、特許庁からの発表(こちら)でも紹介されており、こちらの記事では音源へのリンクもなされておりますので、興味のある方はご参照下さい。これまで登録された音の商標は、「ブルーレット おくだけ♪」(小林製薬株式会社)や「ファイトー、イッパーツ」(大正製薬株式会社)のように、メロディーやリズムに言葉(歌詞)が組み合わさった商標でしたので、言葉(歌詞)を含まない、メロディーやリズム等のみからなる商標が今回登録されたことで、商標の登録対象が広がったと言えるでしょう。
これらの商標は、商標登録が拡充された平成27年4月(BMWは8月)に出願されておりますので、約2年半かけて審査されており、通常の商標登録出願の審査期間が概ね半年程度であることと比較すると、非常に長い時間かけて審査されています。内部事情に関しては外部からうかがい知ることはできませんが、商標登録を拡充される前にも特許庁内で十分に検討していることが予想されるため、個別事例に関してどのように判断するかについて、審査官も出願人(代理人弁理士)も双方が色々苦労した結果なのでしょう。
商標登録を受けるためには、「自他識別力を有すること」が要件の一つです。これは、商標から識別力が発生しているか、つまり、その商標から、出願人の商品やサービスを需要者がイメージできるかどうかが、登録するための要件の一つとして求められています。例えば、「ブルーレット おくだけ♪」というフレーズを耳にすれば、ほとんどの方が小林製薬株式会社の洗浄剤(ブルーレット(登録商標))を他社の洗浄剤と区別してイメージするでしょう。また、このように商品名が含まれていなくても、「ファイトー、イッパーツ」というフレーズを耳にすれば、ほとんどの方が大正製薬株式会社の栄養ドリンク(リポビタンD(登録商標))を他社の栄養ドリンクと区別してイメージするでしょう。このように、音階に歌詞(言葉)が組み合わさることで、特定の商品がイメージを想起しやすくなります。
一方、メロディー等のみで歌詞(言葉)を含まない商標の場合、メロディー等のみから特定の商品やサービスをイメージできるか否かが判断基準となるため、メロディー等のみでもイメージされるのか、言葉と組み合わさることで初めてイメージされるのかの判断について、出願人の提出した証拠をどのように判断すべきかで審査官も苦労したことが予想されます。この観点から考えても、今回登録されたものは、いずれも音(メロディー)のみから出願人を想起できるほど有名なもので、高い著名性が示されていることが予想されます。
少なくとも、現在の登録状況を見ている限り、音楽的要素のみの商標の登録のためには、非常に高い著名性が必要で、私の印象としては、日本人であればほとんどの人が知っている(聞いたことがある)というレベルであることが、登録を受けるために必要な前提条件であるように考えております。このため、新しいタイプの商標登録を行う際には、もう少し様子を見るか、非常に高い著名性を有していることを示す大量の資料を準備する必要がありそうです。
商標の登録要件は法律上規定されておりますが、規定された要件に該当するか否かは、実際の商標の使用状況等も判断対象に含まれたり、新しいタイプの商標のように、商標の種類毎に要件に該当するか否かの判断が分かれたりするものがあり、判断が難しいものも少なくありません。また、判断基準についても、法律上の規定が同じでも、社会情勢に応じて特許庁の運用は毎年のように変わっています。特許庁の審査には時間がかかりますので、貴重なビジネスチャンスを逃さないためにも、専門家に相談することをお勧めいたします。
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